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2011年9月の2件の記事

2011年9月18日 (日)

自閉症カンファレンス NIPPON 2011 に行きました(その2)

自閉症カンファレンスの発表で一番心を砕いたのは,どこでどうやって笑いを取るかということ。自閉症の療育を専門にする方々の話は,とても分かりやすくて,さりげなく笑いも織り交ぜてあり,私はいつも感心してしまう。私自身はあまりジョークが得意ではないので…というよりむしろ苦手なので,ジョークもその場の機転ではなく,自分なりにしっかり作り込んで持っていく。だって,20分間一度も笑わずに人の話を聞くなんて辛いですからね〜。

それはともかく,(その2)で書きたいのは,自分が聞いたメジボフ教授の講義についてだ。

「自閉症の人の学習スタイル」(ゲーリー・メジボフ ノースカロライナ大学教授)

TEACCHプログラムが明らかにしてきた,自閉症スペクトラムのこどもたちの学習スタイルについて,この10年間変わらずに大切にしてきた部分と,この10年で新しく追加したことについてのお話しだった。

印象に残ったのは,自閉症の人と定型発達の人の脳を比較すると,脳の各部分の働きはそれほど違いがないんだけれども,脳の各所を協働させる働きが自閉症の人の脳では弱い(脳内での情報の受け渡しの効率が悪い)ということが,この2〜3年で分かってきたというところ。

この脳のつながりの問題に関連して,意味を見つけ出すことの困難さや,次に何が起こるかという予測の困難さが生じる。したがって,ものごとのつながりをより良く理解するための情報や,次に何が起こるかという未来を理解できるための情報を提供することが大事。前者は例えば言葉の概念を学ぶときに絵や写真を一緒に用いることであり,後者の例としてはスケジュールが上げられる。

また,注意が狭い範囲に集中するという例として,テンプル・グランディンさんがこどもの頃,馬のことにしか興味がなくて,まったく勉強に実が入らなかったという話があった。その時,担任の先生は馬への強い興味を生かして,言葉や数学をすべて馬に関連させて教えたのだそうだ。

この話を聞いて思い出したのが,うちの高等部のHくんのこと。彼は勉強が大嫌いで,登校するなり「学校終わり,がんばった!」と何度も言うような生徒だ。音楽の授業で全員合奏をすることになり,Hくんは鈴の担当になった。しかし,まったく興味を示さない。そこで担当の先生は,鈴に彼の大好きなチーズバーガーの絵を貼り付けた。そうしたら,今までまったく興味を示さなかった鈴を,一生懸命叩くようになった。その状況で,公開研究会の日を迎えるのだが,その公開の授業で事件が起こった!

Hくんがあまりに一生懸命鈴を叩きすぎたために,チーズバーガーの絵が飛んでいってしまったのだ。これを見て,担当の先生は「あー,もう彼の演奏は終わった」と思った。ところが,Hくんは飛んでいった絵を拾いに行き,わざわざ鈴に貼り直して再び演奏に加わったのだ。この姿は彼の日頃の姿からは思いもよらない行動で,私たちはとても感激したものだった。狭い興味をうまく活用すると,こんなふうに生徒のやる気を引き出すことができるんだということを,教員みんなで学んだ出来事だった。

「TEACCHプログラム・コアバリュー2011」(ゲーリー・メジボフ ノースカロライナ大学教授)

コアバリューというのは,その組織が大切にしている価値感のこと。TEACCHに携わる人が共有している価値感や信念についての話だった。

TEACCH部のすべての関係者に,「日頃の仕事で何を大切にしていますか?」というメモを回し,戻ってきた回答をまとめる中から抽出されたものに,ショプラー先生が大切にしたことや,他の組織のコアバリューも加味しながらつくったとのこと。

その中で特に私の心にヒットしたのは「Psychology of Personal Development」(個人発達の心理学)の説明の中の次の言葉。

・自立で大切なのは能力を伸ばすだけではなく,自分に能力があると思えること(「自分はできる!」と思えること)が大切。
・そのためには,達成や成功を視覚的に確認できる手だてがあるとよい(例えばチェックボックスなどを使って)。
・自閉症の人は,自閉症の部分(特性)と同時に,人としてのその人という面も持っている。自閉症の部分だけに目を奪われずに,人として伸びていくことにも目を配る必要がある。

このあたりは,成功体験を積み重ねて自己効力感を高めようという,うちの高等部の研究ともリンクする話で,我が意を得たりとうれしくなった。

このコアバリューはたびたび改訂しているという。私はコアバリューはみんなの意見を集約してつくることも大切だが,つくって終わりというものではなく,それを折に触れて見直して,内容をブラッシュアップしていく過程にこそ,意味があるのではないかと感じた。

TEACCHのコアバリューを参考にして,例えば,光明支援学校のコアバリューとか,自分自身のコアバリューとか,いろいろつくってみると学びがあるのではないだろうか?

さて,今回の自閉症カンファレンス NIPPON 2011 では,この他にも,

・リー・マーカス先生の「自閉症の本人へのカウンセリング」の講義も勉強になった!
・「医療ルーム」でTwitterとFacebookでお付き合いをいただいている皆さんにお目にかかった!
・懇親会で梅永先生に紹介された若い初任の先生が,私の出身高校(鶴岡南高校)の後輩だった!
・自分の学校から3人もこのカンファレンスに参加した!(そのうち1人は会場で会ってビックリ)
・東京のど真ん中で3カ所も蚊に刺された!

など,楽しいうれしい出来事(だけじゃないけど)がたくさんあった。
本当に素敵な2日間だった。

自閉症カンファレンス NIPPON 2011 に行きました(その1)

8月27日(土)から28日(日)にかけて,早稲田大学で開催された自閉症カンファレンス NIPPON 2011に参加した。仙台から参加となるとお金も時間もかかるし,この日程だとすでに2学期が始まっているということもあって,最近はなかなか参加できずにいたが,やはり参加すると,毎回新しい学びがあり,昔からの仲間との再会があり,知識とやる気とエネルギーをもらうことができる。今回も素晴らしい2日間だった。

2002年に初めて開催されたこの研究会も,今年で10周年を迎えた。実は第1回の2002年に分科会で発表する機会をいただいて「ビデオによる視覚支援2例」という発表をした。今回10周年ということで,もう一度発表しませんかというお誘いをいただき,いいチャレンジを与えられたと思って,発表させていただくことにした。

いや,本当のところは,自分にその役が務まるとは思えなかったのでお誘いを受けるかどうかしばらく悩んだ。最近の自閉症療育事情にはまったくついていけてないし,TEACCHプログラムに基づく実践も皆さんに紹介できるレベルでできているわけでもない。

Finder001_2皆さんにお伝えできるとすれば,昨年度まで高等部で取り組んでいた,生徒の主体性を引き出す研究のこと。体験学習サイクルを意識した指導で生徒にたくさんの成功体験を与え,自己効力感を高めるという考え方や,その実践から導かれた「主体性を引き出す14の手だて」は,全国からカンファレンスに集まってくる意識の高い皆さんに,お伝えする価値があるかもしれないと思った。

そんなわけで,自閉症カンファレンスなのに,話の中に「自閉症」という言葉がほとんど出てこない発表ではあったが,時間をいただいてお話しをしてきた。分科会の進行をつとめていた村松陽子先生には,自己肯定感を高めていくことはとても大切で,その具体例を紹介してくれたのが良かったという趣旨のコメント(ちょっと記憶が曖昧…)をいただいたりして,会場の皆さんに概ね好意的に受け止めていただいたようでホッとした。

講演要旨:目標設定と体験学習サイクルで生徒のチャレンジを引き出す(自閉症カンファレンスNIPPON 2011)
http://hiroy.kir.jp/autism-conference2011.pdf

ビデオによる視覚支援2例(自閉症カンファレンスNIPPON 2002)
http://hiroy.kir.jp/tokushu/conference02/kouen/index.html

興味深かったのは,TEACCHにあまり関係がないと思っていた自分の発表の中に,メジボフ教授の講義内容と関連するところがいくつかあったところだ。自分たちが取り組んできたことに裏付けを得た気持ちで,これにはとても勇気づけられた。

ところで,余談にはなるが,今回の発表で私はひとつの挑戦をした。それは,発表のプレゼン資料を iPad2 でつくり,iPad2 の Keynote(プレゼンアプリ)で発表すること。

iPad2 に Apple VGAアダプタ をつなぐと,iPad2のディスプレイに映っている映像を液晶プロジェクタに出力することができる。特に難しい設定はなく,接続するだけで簡単に表示される。そうやって表示させたプレゼン画像を,iPad2 と Bluetooth接続した iPhone の Keynote Remote アプリで操作すると,iPhone でスライドをめくったり,発表原稿のメモを見たりすることができる。iPad2 を一度も触らずに,iPad2 の置き場所を気にすることもなく,お客さんの方を向いてプレゼンを進めることができて,とても快適だった。

323121_203634869696229_100001491538写真は,iPad2 の Keynote アプリでプレゼンをつくっている時の様子だ。iPad2 の Keynote アプリは,Mac本体の Keynote アプリよりシンプルなつくりになっていて,使えるフォントやトランジッションが少ないなど制約が多かった。でも,使っている間にその制約にも慣れて,アプリがシンプルな分,プレゼンもシンプルなつくりになって,かえって良かったかもしれない。ただ,プレゼン画面と発表者ノートの編集画面を同時に出せないので,プレゼンを見ながらセリフを考えて入力するのは辛かった。その作業だけは,データをパソコンに移動して編集し,それを iPad2 に戻すというやり方で行った。


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